サンレモの夜に、音はどこへ届くのか。
- 2 日前
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はじまり
2月のリグーリア海岸は、夏とはまったく違う顔をしている。 観光客の姿は消え、地中海からの風が街を素通りしていく。 それでもサンレモという小さな街は、毎年この季節になると イタリア全土の視線を一身に引き受ける。
サンレモ音楽祭(Festival di Sanremo)。1951年の創設以来、途切れることなく続いてきたこの音楽コンペティションは、単なる歌番組ではない。イタリアの戦後復興と共に生まれ、テレビという新しいメディアの成長と歩調を合わせ、今日にいたるまでポップカルチャーの「中心軸」であり続けてきた場所だ。
新曲しか、許されない。
サンレモのルールは独特だ。出場アーティストは既存のヒット曲を歌うことができない。必ず新曲を披露しなければならない。
これは単なる縛りではなく、このフェスティバルの本質を決定づけている。 サンレモとは「過去を振り返る場」ではなく、「その年の音楽の方向性が決まる場」なのだ。 ここから生まれたヒット曲は数知れず、無名のアーティストが一夜にしてスターになることも珍しくない。 オーディオマニアの言葉を借りるなら、サンレモは毎年一度だけ行われる、イタリア音楽の「初出し試聴会」だ。
国家放送と、リビングルームの記憶
国営放送 RAI が全国中継するこのイベントの視聴者数は、毎年数百万人規模に達する。 イタリアでは「家族でソファに集まって観る冬の風物詩」として定着しており、 ある種の集団的な記憶装置としての役割も担っている。
同時に、ヨーロッパ全体に目を向けると、このフェスティバルは Eurovision Song Contest とも深く接続している。 イタリア代表がサンレモから選ばれることも多く、純粋な国内イベントの枠を超えた存在感を持つ。 ガジェット好きに伝わる表現をするなら、サンレモは「ローカル規格でありながらグローバル標準に影響を与えるプラットフォーム」に近い。

歴史メモ
1951年の第1回は、わずか3組のアーティストによるラジオ放送だった。 それが今日では5夜にわたる大規模テレビショーへと成長。 「Volare」や「Nel blu dipinto di blu」など、世界的ヒットもここから生まれている。華やかさの、裏側で

カメラが捉えるのはスポットライトの下だけだが、 舞台の裏側はまったく異なる空気が流れている。 リハーサルは深夜まで続き、音響チェックは何度も繰り返される。 本番に向けての緊張感は、スタジオ収録とは比べものにならない。
そういう場所で使われる機材には、華やかさより先に信頼性が求められる。 「きれいに見える」ことではなく、「本番で絶対に機能する」こと。 舞台裏のプロフェッショナルが選ぶ道具には、それだけの理由がある。
耳に、誂える。

ライブステージにおける IEM(In-Ear Monitor)とは、アーティストが耳に装着するモニタースピーカーの代替だ。 客席に向けられたスピーカーとは別に、演者が自分自身の演奏や歌声を正確に聴くための 「自分だけの音の鏡」——そう表現するとわかりやすいかもしれない。
なかでもカスタム IEM は、装着者の耳型を採取し、シェルを一から成形する。 大きさも、ドライバー構成も、音のチューニングも、すべてその一人のために決まる。 既製品との違いは「サイズの合う靴」と「靴職人の誂えた一足」ほどある。 耳道にぴったり合うシェルは遮音性を高め、余計なモニター音量が要らなくなる。 音量を下げられるということは、長時間の公演における聴覚への負担が減るということでもある。 プロの現場でカスタム IEM が選ばれる理由は、快適さより先に精度と保護にある。
さらに言えば、カスタム IEM はアーティストごとに「何を聴きたいか」が違う。 自分の声だけを大きく返してほしいボーカリストもいれば、 バンド全体のアンサンブルをフラットに聴きたいギタリストもいる。 ドライバーの数と配置、クロスオーバーの設計、シェルの素材—— それらすべてが、オーダーのたびに一から組み直される。 製作者にとっては、毎回が一点ものだ。
2026年、サンレモの現場
サンレモ本番に向けて、NTS Audio のミラノ工房では連日アーティスト対応が続いた。 耳型の採取、シェルの成形、ドライバーの組み込み、音響特性の確認、 そして本人によるフィッティングと最終調整。 アーティストがステージに立つ夜、その耳にある道具の仕事は、 すでに何週間も前から始まっている。
2026年のサンレモ音楽祭において、NTS Audio のカスタム IEM は多くのアーティストのステージに登場した。 サンレモは生放送だ。機材トラブルは言い訳にならない。 その夜、NTS Audio を耳に装着してステージに立ったアーティストは、ここで紹介する4名にとどまらない。 Eros Ramazzotti、Nayt、Olly、Tredici Pietro はその一部だ。 イタリア音楽の中心軸ともいえるこの舞台で、これだけ広く選ばれているという事実は、どんなスペック表より雄弁だ。
■ Eros Ramazzotti
Raiplay
Photo credit: Raiplay
■ Nayt
Raiplay
Photo credit: Raiplay
■ Tredici Pietro
Vogue Italia
Photo credit: Vogue Italia
■ Olly
GQ Italia
Photo credit: GQ Italia
1,500ユーロと、ふたりの専門家
では、NTS Audio とはそもそも何者なのか。 サンレモという極限の舞台で選ばれるブランドが、どこから来たのか。 その出発点は、華やかな場所からはほど遠い。
NTS Audio が生まれたのは2015年、イタリア・ミラノだ。 創業者は2人——音響エンジニアの Riccardo Cherchi と、聴覚補助器具の専門家 Alessandro Mucci。 音を設計する者と、耳を知り尽くした者。この組み合わせは偶然ではなく、 IEM というプロダクトの本質を正面から捉えた結果だ。

彼らが手元に持っていた資金は、わずか1,500ユーロだった。 最初の試作には、歯科用の素材が使われた。 耳のシェルを精密に成形するという課題において、歯型を扱う素材の知識が応用できたからだ。 のちに3Dプリント技術を取り入れながら、試作と改良を繰り返す日々。 工房はミラノの小さなスペースで、製造のすべてを自分たちの手で完結させることにこだわった。
サンレモのステージが、証明したこと
サンレモのステージはその積み重ねの、ひとつの答えだ。 数百万人が見守る生放送の夜、やり直しのきかない本番に、NTS Audio は選ばれた。 華やかなスポットライトの下で聴こえていた音は、ミラノの工房で職人の手によって 一点ずつ作られた道具を通じて、アーティストの耳に届いていた。
観客には見えない場所での仕事が、ステージのすべてを支えている。 それがプロの音の世界だ。 NTS Audio はその世界の、最前線に立つブランドだ。
プロが信頼する音を、あなたの耳で。

2024年、NTS Audio はプロ向けカスタム IEM で培ってきた設計思想を、 より多くの人に届けるための一歩を踏み出した。 ユニバーサルモデル ONE / TWO / THREE の誕生だ。 耳型採取もオーダーも必要ない。それでいて、設計の根幹にある哲学は変わっていない。 「現場で信頼される音作り」——その一点が、すべてのモデルに貫かれている。
そのブランドが今、日本に届いている。 サンレモの夜、数百万人がテレビの前でその音楽を聴いていた。 ステージの上のアーティストたちは、まったく別の音を聴いていた。 自分だけのために誂えられた、小さな道具を通じて。 ONE / TWO / THREE は、その音の世界への入り口だ。 プロが信頼する音が、どんなものか。一度、自分の耳で確かめてみてほしい。
ONE → https://www.iidapiano.store/bland/nts-audio/one TWO → https://www.iidapiano.store/bland/nts-audio/two THREE → https://www.iidapiano.store/bland/nts-audio/three
NTS Audio ブランドページ → https://www.iidapiano.store/bland/nts-audio














