【イベントレポート】冬のヘッドフォン祭mini 2026
- 2月25日
- 読了時間: 5分

今回、私たちがいちばん重視したのは「空間」でした。
製品をただ並べるのではなく、どう見せるか、どう体験してもらうか。
そこまで含めて、展示の設計だと考えています。
■ 空間を設計する
ブース設計は3Dシミュレーションから始まりました。PC上で個室ブースの寸法を入れて、会場のサイズ感をなるべくリアルに再現しながら、什器の高さや配置、照明の角度を詰めていきました。
仮想空間で何度も検証して、当日の“迷い”をできるだけ減らす。
設営はいつも時間との勝負です。だからこそ、事前に詰めておくほど当日の判断が減り、狙い通りに仕上げやすくなります。
色味はホワイトとナチュラルウッドに絞りました。
余計な色は足しません。製品が主役だからです。
これまで私たちは黒基調の展示が多かったのですが、今年からは白基調に切り替えることにしました。黒は空間が締まる一方で、要素が増えると重く見えやすい。個室という限られた箱の中ではなおさらです。
白をベースにすると、光が回って空間の印象が明るくなる。視線が抜けて、製品の輪郭や素材感が見えやすくなる。今回の展示では、その効果を狙いました。
目指したのは、いわゆる“オーディオブース”というより、もう少し落ち着いた場。
製品は機能だけで語られるものではなく、置かれる文脈や、それを囲む空気まで含めてデザインされる。今回はそこを、できる範囲で形にしたかった。
シミュレーションで見えていた空間を、現場でできるだけ再現するために、素材選定も慎重に詰めました。木材の色味、什器の仕上げ、照明の色温度。細部の積み重ねで、空間の説得力が変わります。
■ 当日、ブースで起きたこと
開場は11:00。開始直後から来場者が途切れず、体感として過去一に近い人の流れでした。
一方で、試聴の運用には物理的な上限があります。整理券で時間を管理する枠と、フリーで試せる枠を用意しましたが、どちらにしても1日で体験していただける人数は限られます。
今回はありがたいことに来場が多く、フリー試聴でも待機列ができる時間帯がほとんどでした。その際は、できるだけ多くの方に体験していただけるよう、目安として15分程度で次の方へ譲っていただくお願いをしましたが、それでも列が解消しきれない場面がありました。ここは次回に向けて、運用の設計をもう一段詰める必要があります。
整理券方式についても、別の悩みがあります。PMG Audio「Apx ME」は20分を1枠として計20枠を用意しましたが、配布開始から約15分で予定数に達しました。開始直後に枠がすべて埋まってしまうと、「その時間に会場にいないと聴けない」状況になってしまう。
先着順が唯一の解ではないはずで、より多くの人に、ストレスなく体験してもらうために。次回に向けて運用を考え直します。
とはいえ、個室環境個室ブースは、落ち着いた環境で案内と試聴を提供できるという意味で有効。大型会場特有の喧騒がなく、静かに集中して音と向き合える。ヘッドホンを外したあと、少し余韻に浸ってから言葉が出る。そんな場面が何度もありました。
来場者からは「ブースの雰囲気がいい」「ここにいると落ち着く」という声をいただきました。空間への投資は、正しかったと思います。
■ 展示した新しい製品
ArcTec Berlin「AB 92」

日本初展示となる開放型平面磁界ヘッドホン。ベルリン拠点の新興ブランドが手がけます。超薄膜ダイアフラムに純銀導体トレースを載せる。素材と物理設計から逆算したアプローチが特徴です。Klaus Heinz氏の新プロジェクト。その音を日本で初めて体験できる機会となりました。
PMG Audio「Apx ME」

ポーランドCustom Artのプレミアムライン。世界200台限定のユニバーサルIEM。12ユニット8wayという複雑な構成を、精緻なクロスオーバーと音響設計でまとめ上げています。少量生産だからこそ可能な仕立て。整理券が15分で配布終了となったことが、その注目度を物語ります。
NTS Audio

2025年12月19日に発売されたばかりの新ブランド。今回が発売後初の大型イベント出展です。全モデルを試聴できる貴重な機会として、多くの方に体験していただきました。新しいブランドがどう受け入れられるか。その反応を直接感じることができました。
COS Engineering「D10」(DACアンプ)

D10は、音以前にまずデザインに惚れ込んだ機材でした。写真で見た段階から「これは実物を見たい」と思い、本国とやり取りを続けていたのですが、正直イベントに間に合うかは読めない状況でした。
それが前日に到着。ほぼ滑り込みでしたが、せっかくなら会場で実物を見ていただきたく、急遽展示に組み込みました。
実物は想像以上にかっこよかったです。そして、音も素晴らしい。デザインで惹かれて、音で納得できる。D10はそういうタイプの機材だと感じました。
■ 次に向けて
ご来場いただいた皆さま、主催であるフジヤエービックさま、関係者の皆さまに感謝します。
オーディオ製品の体験は、製品性能だけで完結しません。どこで、どのように提示されるか。それも体験の一部です。今回のブース作りを通じて、そのことを再確認しました。
同時に課題も見えました。整理券の運用方法。限られた空間での動線設計。改善の余地はまだあります。次回に向けて、より良い体験を提供できるよう準備を進めます。
製品と空間。その両方を磨いていきます。
また会場でお会いできれば嬉しいです。


























